「 春を 待つ日 」

公益社団法人 岡山県難聴者協会 会長 森  俊己

 節分が過ぎ、拙宅の小庭の水仙、梅の蕾が膨らんでいます。北房ぶり市、西大寺会陽など、県下各地から春の気配を先取りした行事のニュースが伝えられ、春近しを思います。

 「酷寒の刺激がなければ花は咲かない。辛くても、その苦しみがやがて来る春に花を咲かせる元になる。梅の花はそう教えてくれているように思います。やがて迎える春にどんな花を咲かせるか。春はそこまで来ています。困難があるから喜びがあり、成長するのではないでしょうか」ある人の言葉です。苦労を糧に成長しているかと問われたら、疑問符がつく私ですが、なるほどと思います。

 難聴は「見えない障害」といわれます。どんなことに困っているか、一見しただけでは分かりません。コミュニケーション障害といっても一様ではなく、私たちの抱える困難を他の人が想像するには難しさがあります。そのため、聞こえることが前提となっている社会ではどうしても孤立を招きやすく、深刻な事例に接することも少なくありません。

 当会は、岡山県自立支援拠点活動支援事業として聞こえの不自由な方を対象に行う「聞こえの相談会」に協力しています。参加されるほとんどの方は、その地域にお住まいですが難聴者協会の会員ではありません。「ここに仲間が居るよ。気兼ねなく語れる居場所があるよ。元気もらって、明日からまた社会の中で頑張ってね」口には出せずにいるのですが、私はいつもそう思っています。

 私が難聴者協会に入ったのは、「友だちが欲しい」ただそれだけでした。それだけで今日まできましたが、仲間と交わるうちに器を磨いてもらった気がしています。縁あって会員になられた皆さんも、仲間の存在を知ることで気持ちを倒さず暮らしていける。語り合い、学び合い、笑い合える、そんな拠り所として迎えられるように努めたいと考えます。 諦めにも似た心情を抱えて訪ねて来られる方と出会うたび、「もうすぐ春が来る。その苦難を埋め合わせる喜びが待っていますよ」と、心の中で呟かずにいられません。