「新年のごあいさつ」

一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 理事長  宿谷 辰夫

 新年、明けましておめでとうございます。
 昭和48年(1973年)に全難聴の原点ともいうべき「全国難聴者組織推進単位地区研究協議会」が発足してから、半世紀が過ぎようとしています。また、それまでに各地方で芽生えかけていた要約筆記が全国的な普及に至るのは、この会合に参加した中途失聴・難聴者が、要約筆記を通じて複数人との会話が成立したことの感動を地元に持ち帰り、取り組みを始めたことに起因すると言われています。協議会発足の2年後には、入谷仙介・林瓢介編『音から隔てられて』が出版されており、当時は中学生であった私も読者の一人として、自分なりの難聴者としてのアイデンティティを確立することができたのではないかと考えております。このお二人の先生との出会いがなければ、難聴者運動とは無縁であったかも知れません。 
 僭越ながら、先人が築き上げて来られた全難聴という組織をお預かりする立場にいる一人として、理事や加盟協会の長をはじめ会員の皆様方と共に進むべき今後の方向性について、日々自問自答している現状にあります。
 加盟協会の皆様が全難聴に対して何を求めておられるのか、このことを掘り下げて考えてみますと、一つには省庁等に要望していく力を持ち得るためには全国規模の組織が必要だということ、そして、国内や海外にむけての聴覚障害関連情報の発信源としての期待値があるのだろうと思います。
 全難聴は数年来「きこえの健康支援体制」の構築を提唱しており、①聴覚機能が低下した人自身が自分の聞こえを知り、周囲に説明できる力の獲得 ②聴覚機能が低下した高齢者等も気軽に相談できる場の設置 ③難聴対策に関わる人材の育成やリハビリテーション環境の整備……などを目指しています。今後、加盟協会とも連携して、当事者一人ひとりに対して個別に寄り添う体制づくりが必要であると考えております。
 最後になりますが、一人でも多くの方々の全難聴への思いが、聞こえの課題克服のストラテジーに繋がります。皆様と共に歩み織りなす道が希望に満ちたものであることを信じています。
 今年一年皆さまと力を合わせた運動がより一層前進することを期待して、また皆さまのご多幸・ご健康をお祈りして、全難聴よりの新年のごあいさつとさせていただきます。