岡山難聴2016年8月号巻頭言

「人生は遠き道を行くが如し、急ぐべからず」

                岡山県聴覚障害者福祉協会 会長 中西 厚美

みなさん、こんにちは。私たちは聴覚障害者の福祉向上及び社会参加に対し、それぞれの立場で運動を進めてきました。長い歴史の中では、生育環境及び社会的な価値観に翻弄され、時には仲違いしてきた時期もあります。しかし、人間の生きる価値というものはどんな環境においても普遍的なものであり、大多数の価値観に支配されない強さは必要でしょう。私たちが社会運動をするのは聞こえない立場の主張もありますが、他人に理解してもらえると思えばこそ運動の継続性が生きるのです。これからも共に頑張っていきたいと思います。
4月から障害者差別解消法が施行されました。元々この法律はアメリカのADA法を母体にして日本では差別禁止法と解釈されていました。しかし、あらゆる差別を法の力によって社会を断罪することは日本人にはなじみにくく、アメリカに於いてさえADA法による訴訟を起こしても敗訴がたくさん報告されています。そういう背景から「解消法」という人々の合意形成という柔らかな表現に置き換えられたと思います。つまり、障害者が感じる差別事象に対して当事者も含めたあらゆる人々とのコミュニケーションによって合意を形成していく方法としての法律だと思います。しかし、忘れてはならないのは、私たちはマイノリティ集団であり「予算がない」と言われればそれまでになりやすい危険性は今後とも続くことが予想されることです。今後あらゆる場面で合理的配慮に関する具体的な提示及び相手を納得させる説得力ある言葉が必要になるでしょう。
今、世の中では、あらゆることが法整備されてきています。規則が明示されると人々は動きやすくなるでしょう。それにしたがって動ければ誰からも批判はされません。しかし、行き過ぎた法整備も人々に自由なコミュニケーションがやりにくくなる面もあります。人権に関わる法律と表現の自由というところに法整備の難しさがあります。
これからも私たちの思いが社会に反映できるようともに頑張っていきましょう。そして、若い人に運動の目的を伝えて行きたいと思っています。