要約筆記を広めるために

やかげ要約筆記サークル 岡本 緑

 毎年、町や町社会福祉協議会主催の講演会などに要約筆記者として派遣され活動していますが、要約筆記の認知度が一般社会へ高まっているとは言えず、日頃、聞こえに不自由を感じない担当者を相手に交渉しても派遣の幅が広がっていかない現実があります。「補聴器をつければ聞こえる」との思い込みも要約筆記者派遣への障壁になっている気がします。

 そのような悲観的な思いに落ち込みがちだった折、『難聴って、何なん?』(公益社団法人岡山県難聴者協会発行)の冊子が手元に届いたのをきっかけに、要約筆記を一層広めていかなければとの思いを強くしました。そこで、早速、行動を起こしました。やかげ要約筆記サークルの例会の研修で冊子を配布し、皆で読み合い内容を再確認しました。

 続いて、中高生対象の夏ボラ体験の講義資料に加えました。

 そして、要約筆記を広めたいとの強い思いから提案したのが、やかげ女性連絡協議会主催の講演会で「難聴者と要約筆記」を取り上げることでした。40名余の参加者を前に前記の冊子の内容を引用し話を進めていきました。

 聞こえの仕組みの図を基に高齢になると体の衰えと同じように音を感知する器官(蝸牛の有毛細胞)が摩耗して役割が果たせなくなり、薬では治らないことを話しました。

 「聞こえの困りごと」を会場からの参加者から発言していただき共通理解していきました。冊子が役立ったのは言うまでもありません。意思疎通支援の手段としてよく知られているのは手話ですが、すぐ利用できる手段として要約筆記が有効であることを納得してもらうことが大事であることを強く感じました。

 また、要約筆記は集団での全体投影だけでなく個人派遣にも対応していることを話しました。「難聴者の母が病院に行く時について行かないといけないから頼めたら助かるんだけど?」「送り迎えはできないのですよ」「それじゃあ頼んでも仕方ないわ」のやり取りもありました。その会では実際に困っている当事者の声は聞けなかったのですが、他の会合で、私が経験した難聴者のこと。そこに参加されている補聴器をつけておられた方が側に来られ「聞こえないことがあるから書いてください」と言われたこともありました。このように実際に困った場面を体験されている人が社会の中には多いのではないでしょうか。

 最後に、本年度は小学校4年生の福祉授業として「要約筆記」の出前講座を担当する予定になっています。矢掛町の様々な場面や機会を通じて要約筆記を広める活動も当サークルの活動の大きな柱のひとつとして継続していきたいと思っています。サークル員は少人数でも常に向上心を持ちチームワーク良く前に進んで参ります。