意思疎通支援事業利用の拡がりを願って

岡山県要約筆記団体連絡会 会長   佐 藤  聡 子

 経験したことのないような酷暑の中、第27回参議院選挙が終わりました。こちらについても今までにない様相を見聞することとなりました。近年にない58%を超える投票率(全国平均)も話題になっていますが、選挙権を当たり前に行使できなかった人はいなかったでしょうか。私は、いつも期日前投票という方法で選挙に参加しています。今回も早々に投票所へ足を運びました。投票所入口で最初に求められるのは、宣誓書記載という作業です。目を引かれたのは、周囲の標記物の中でも特に目立つほど大きな「耳マーク」の表示。入口に暖簾のような大きな表示物でした。「筆談やコミュニケーションボードによるご案内をしますのでお申し出ください」と書かれ、配慮が感じられる心が温まる光景でした。この表示を見て、聞こえづらい人たちは緊張感が和らいだのではないでしょうか。選挙担当者に「優しい対応ですね}と声掛けしましたら「全ての人が選挙に参加しやすく配慮するのは当然です」という返事が返ってきました。

 昨年5月に障害者差別解消法の改正があり、法に対する周知や理解が広まっている雰囲気は、派遣現場などでも度々感じられるようになってきています。 さて、一方で私たち要約筆記者のこと。意思疎通に困難さを抱えている難聴者・中途失聴者の支援者として、専門的な知識や技術の習得をめざして養成され、要約筆記者認定試験に合格し、岡山県知事資格者証の交付を受けた要約筆記者たちが県内各地に多く存在しています。しかし、利用される当事者からの派遣依頼の件数には地域差が大きく、社会福祉サービスの貴重な資源でもある要約筆記者派遣制度が十分活用されているとは思えないことが、私たちの課題の一つとなっています。命や権利を守る現場、技術・知識の習得や、ご自身の役割を果たす現場、人とのかかわりを必要とする現場などに出かける際には、対人支援者としての専門職である要約筆記者をしっかりとご活用ください。