公益社団法人 岡山県難聴者協会 会長 森 俊己
きっかけは令和元年11月に協会創立50周年記念事業として開催した「加齢性難聴を考える」というシンポジウムでした。基調講演をいただいた森壽子先生から、超高齢社会に入り、福祉の外にある加齢性難聴が社会問題となりつつある今、協会としても取り組むべき課題なのではとのご示唆をいただき、身体障害者手帳がなくても補聴器購入の公的援助を受けられるようにできればという思いに至りました。
とはいえ、何から始めて良いのか?まずはできるところから。全国実情を調べると、すでに実施している自治体があり、その動きを参考に、まずは署名を集め、私の地元、瀬戸内市に加齢性難聴 補聴器購入助成を働きかけようと決めました。
加齢性難聴は、障害福祉に限った問題ではなく、市の福祉課のほか、いきいき長寿課、社会福祉協議会の地域包括センターなど各方面に声掛けをしました。介護に関わる方や高齢の方を対象にしている「現場」にも大きな反響がありました。これまで移動や身体の不具合に目が向いていたけれど、加齢難聴の方が増えるなかでコミュニケーションをどう取ればいいのか?そんな課題を実感されていました。
現場に関わる職員さんにも背中を押され、署名活動を通じて人脈が横へ横へと広がっていきました。思い切ってお声がけした医師会のご支援も頂戴することができ、行政に切実な声を届けることができたと思います。ついに要望を瀬戸内市長まで提出することができ、市長が市議会において「加齢性難聴者を対象に補聴器購入の助成」を創設する考えを表明されました。このことは、社会には、表に出てきていなかった隠れたニーズがあり、投げた小石がタイムリーで、個の思いを越えて広がっていった、時代が要求した結果なのだと。私はそう思っています。かくして瀬戸内市は、岡山県で初めて高齢難聴者の補聴器購入を助成する「高齢者補聴器購入費等助成事業」を立ち上げた市となりました。 先日、当会で助成制度の調査をしたところ、現在、岡山県下では7つの市町村が実施していることがわかりました。また、赤磐市が前向きに検討しているとの新聞報道があり、取組が広がっているのは嬉しいことです。しかしながら、岡山県の多くの市町村が未実施で取り残されている現状がどうしても気になります。一日も早く、全県下に広がることを願ってやみません。
(岡山県難聴者協会創立50周年記念事業 シンポジウム「加齢性難聴を考える」については、協会ホームページの資料のページに詳細が掲載されています。)