聴く

美作要約筆記サークル 
纐纈 幸子

 コロナ禍の中で要約筆記者が派遣されていたイベントのみならず、ほとんどの行事が中止されている中でも当サークルの定例勉強会は毎月開催しています。岡山市在住の私は万が一を考えて参加は控えていましたがワクチン接種も終え岡山市内の感染者も減少してきたことを見計らって最近は参加するようにしています。定例会では最初に頭の柔軟体操をするように、漢字や語彙の確認をクイズ形式で取り組みます。柔軟体操のはずが結構頭を悩ませる問題ばかりです。その後はノートテイク、ロール書きと進めていきます。定例会がサロンにならないようにと毎回当番がその時期にタイムリーな内容のレジメを用意し熱心に研鑽を積んでいます。
 私事ですが先日、県のハートフルフェスタの講演会に行きました。昨年に引き続いての参加でした。今年は岡山県視覚障害者協会副会長の竹内昌彦先生と、山形弁研究科のダニエル・カールさんの講演会でした。竹内先生の講演を初めて聞いたのは十年以上前のことです。それからご縁がある度に聴講させて頂いています。温和な笑顔に毎回癒され、先生の悲しみに涙しています。障害を笑って語れるようになるにはどれ程の涙を流されたのでしょうか。私自身は障害を持っている我が子に対して,後悔ばかりで笑って語れるところまでたどり着いていません。先生の言葉に『聴く』という字は耳と目と心で出来ているから人の話は心して、よく聴くようにと言われたことがありました。この言葉を受けて思うことは、聴くことに不自由を感じている人たちへ私たちは、心を届けられているのだろうか、それとも情報のみで心は届けなくてもよいものなのだろうかと考えさせられます。
 ダニエル・カールさんは山形弁を巧みに操って聴講者をひきつけていきました。このギャップを楽しいと感じるのは良いことだと思うのですが、これもアンコンシャス・バイアスとなります。先入観を持たないようにとは難しいです。さて、歴史の長いサークルですが、この度大先輩方が第一線から引くことになりました。今までサークルを牽引してきてくださった先輩方です。これからが美作要約筆記サークルの粘りどころです。まだまだ発展途上のサークルですがお力添え宜しくお願い致します。