「要約筆記奮闘記」

せとうち要約筆記クラブ 爲房 悦子

 11月13日に、岡山・香川・徳島の三県の難聴者団体が「長島愛生園社会探訪」にて瀬戸内市にいらっしゃいました。県要連からの派遣要請を受け地元団体として対応いたしました。バス2台を仕立てての来訪で多くの人の参加者が予定されているとのこと。瀬戸内市登録要約筆記者に加え備前市の通訳者にも入っていただき計6名での通訳活動となりました。まず、取り組んだのは現地下見と愛生園の学芸員さんとの打ち合わせ。2週間前に歴史資料館に出向きました。
① 時系列で館内、館外での行動予定を把握する
② 多数の方々への情報保障の在り方と位置取り
③ 移動を伴う情報保障での用具や方法 等々
押さえるべき内容を細かく打ち合わせました。
 皆さんが到着したら大会議室に集まり学芸員さんによるパワーポイントを使っての説明と字幕付き動画を見てもらう。隣接の歴史資料館に移動しジオラマの説明。その後、戸外を徒歩移動にて施設を何か所か回り説明を受け、解散という流れを理解しました。
 何か足りないことは?と考えている中で大会議室にヒヤリングループを設置した方が良いのではということになり、前日に難聴者団体と要約記団体がそれぞれループを持ち込み、部屋全体が範囲になるように設置しました。
 そして当日を迎えました。が、朝は雨! スクリーン、OHC、プロジェクター、周辺の関連用具、ホワイトボードも大小サイズの準備・筆記用のホワイトボード用ペンも各種準備。各々が役割分担して持参し、大掛かりな準備となりました。戸外での徒歩移動の際の情報保障については雨天の場合と晴天の場合の両パターンについて事前に細かく打ち合わせをしていましたが、さすがに天気が心配で、晴天を祈っていました。
 11時に要約筆記者全員が合流。大会議室に全ての機器を設置。13時からの情報保障に備えました。開始までに時間の余裕もあり大きなホワイトボードを使っての動きや、雨の場合のシミュレーション等を行いしっかりと準備しました。
 13時にバスが到着。参加者をお迎えし大会議室で学芸員によるハンセン病についての講義が始まりました。情報保障は、主筆者1人、サブ2人、引き手1人、待機2人としました。待機者がスクリーンを見ながら的確に指示してくれたため、スムーズな交代もできました。
 字幕付き動画も終わり、外を見るとなんと!雨が上がっているではありませんか。そのあとから歴史資料館に移動し、40名あまりがジオラマを囲い説明を聞くという流れだったのでホワイトボードの大サイズのものをフル活用して情報保障に臨みました。両側をそれぞれ要約筆記者が持ち、高めに掲げてメインがボードマーカーで書いていくのですが、皆さんOHCで慣れているため、いくら事前に練習したとはいえ、交代方法のシミュレーションのみ…不安もありましたが、そこはさすが要約筆記者。皆迷いなく手を止めることもなく、ひたすら書き続けていたことは感動ものでした。2枚のホワイトボードをうまく使い分け情報が途切れないようにコンビネーションよく情報保障が進みました。6名の要約筆記者が持てる力を存分に発揮しながら息の合った情報保障ができたと思っています。
 役に立っていると思える場面も沢山ありました。ずっとホワイトボードの情報保障を近くで見ていた難聴者の人たちが頷きながら文字情報を目で追って下さっていたのです。皆さんの視線に要約筆記者も大きな達成感を味わうことができました。戸外での施設巡りは坂道移動が多く、予定していた時間より30分超過してしまいました。帰りの電車の時刻もあり徒歩の観光ルートは予定していたところを省略し3か所で終わってしまいました。皆さんにとっては途中の坂道でかなりの体力を奪われ足腰にかなり負担がかかったと思います。しかし、皆さん、お元気ではつらつとされ、むしろ私達の方が元気を頂きました。要約筆記者も体力が必要と痛感した一日でした。平素の室内での活動とは違って戸外での作業だったので用具の工夫など勉強になることや課題もたくさん見つかり収穫もありました。今後の派遣に役立つことを思い、奮闘記とさせていただきます。