岡山難聴2016年9月号巻頭言

 老人性難聴について
                公益財団法人岡山県身体障害者福祉連合会 会長 藤田 勉 

 暑い毎日が続いていますが皆さんお変わりありませんか。
 超高齢化社会に突入している我が国では、「老人性難聴」は難聴者協会だけの課題ではなく、社会全体の大きな問題となっています。老人性難聴とは加齢による聴力低下で、定義がはっきりしない。加齢以外特定の原因が無い。つまり、治療法が見当たらない。聞こえづらくなってくるとコミュニケーション障害が起こってくる。そんなこと当たり前と思われるかも知れないが、聴力障害とコミュニケーション障害は別次元の問題です。コミュニケーション障害が発生するとストレスが溜まり、性格や行動に変化(異常)を起こします。ある専門医は認知症になりやすいと言っています。難聴者にとって、生活上の留意点としては、本人及び家族が性格・行動の変化をしっかり、前向きに理解することです。大声で怒鳴らず、そばに近寄って真っ直ぐ向き合ってゆっくり話しましょう。補聴器は最大の効果をもたらすものです。初期の高齢難聴者は高価な複雑なものより着けやすいものから、着装に慣れることが肝要だと思います。 
 さて、去る7月26日神奈川県で忌まわしい障害者殺人事件が起こりましたが、「意志疎通が無い障害者は生きる価値が無い」という加害者の考えは、障害者の人間性を否定したもので、許せません。日本にも1996年まで優生保護法が存在しました。何をもって優生というのか。私達は財政の足を引っ張る社会のお荷物では無い。しかし、現実は効率や成果主義が跋扈する厳しい競争社会です。社会から疎外され、施設中心の暮らしから、共生社会成立を目指し、差別解消法を進めていくのは、私達障害者の社会的使命であります。富の追求など競争第一主義から新しい価値観・社会構造の確立に、弱い立場の障害者だからこそ寄与・貢献をしなければなりません。皆さんと共に頑張って行きましょう。