コロナ禍の中での要約筆記活動

2021年5月号巻頭言
コロナ禍の中での要約筆記活動
   岡山県要約筆記団体連絡会 会長 佐藤聡子

 あふれるような情報社会の中で私たちは世界中の情報をどこにいても瞬時に入手することができる時代となっています。ICTを活用し人との繋がりも簡単にでき、必要な情報も簡単に入手できる時代です。今、コロナ禍のもと対面でのコミュニケーションの構築が困難な社会状況の中、人との接触のない様々な情報通信技術の活用に目が向けられています。ICTを活用し文字情報での支援の方法を研究し実用化することで遠隔要約筆記での情報保障に期待が膨らんでいます。岡山県内でも早くから要約筆記団体や難聴者団体による研修会が開催され多くの人たちが関心を持っています。
 障害者総合支援法の下、市町村の必須事業である意思疎通支援事業における要約筆記のあり方についても従来の形だけではなく、より安全が保障できる遠隔からの支援の方法も実用化することで、要約筆記を必要とされる人たちのニーズに合った方法が選択できる方法を増やしておくことが必要だと思っています。難聴者に対する一対一の対人支援と言われるこの意思疎通支援事業の場面は「命を守る場面」「権利を守る場面」「役割を果たす場面」等々多岐にわたっています。要約筆記を利用する難聴者自身が明確な目的を持って利用する公的な福祉サービスとして設置されています。担い手である要約筆記者にも一定の専門的な技術が要求されるため、この事業の担い手には長期間の養成カリキュラムの履修と修了後の全国統一試験の合格が義務付けられています。
 岡山県内に難聴者を支援しようという機運がおきたのは1980年代。全国的に見ても早い時期からの取り組みでした。情報支援機器も乏しい時代。一番の強みは聞こえないという困難さを持つ人たちを文字で支援してあげようという思いを持つ熱心な方々でした。1960年、岡山市には全国に先駆けて難聴者学級が開設されていたことも難聴者支援への思いが深まったことの要因かも知れません。そして今、岡山県には約170名の要約筆記者が登録されています。多くの要約筆記者達がコロナ禍の中でも同行支援をせざるを得ない通訳場面も多いのが現状です。
 新型コロナウイルスの発生当時から私たちは出来うる限りの安全対策を取り難聴者からの支援依頼に応えてきました。要約筆記を利用する難聴者に聞き取り調査をしてみると「同行支援を希望する」という声が多いのも現実です。様々なニーズに心を寄せながらより安全で有効な要約筆記が提供できる努力をしていきたいと思います。