「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」

公益社団法人 岡山県難聴者協会 会長  森 俊己

 昨年、衆参両院全会一致で可決成立した「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(いわゆる、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」は、同年5月25日に公布・施行されました。先日の全難聴・要約筆記事業研修会のテーマであったこの法律についての概略を、研修会での話をもとにお伝えしたいと思います。
 アクセシビリティとは、「近づきやすさ」「利用のしやすさ」。障害があっても他の人と同じように情報の取得ができるように、また、使いやすいようにしましょうということです。
 本法の目的を述べる第1条では、「全ての障害者が、あらゆる分野の活動に参加するためには、情報の十分な取得利用・円滑な意思疎通が極めて重要」であるとされています。
 続く第3条では、基本理念として
① 障害の種類・程度に応じた手段を選択できるようにする。
② 生活を営んでいる地域にかかわらず等しく情報取得等ができるようにする。
③ 障害者でない者と同一内容の情報を同一時点において取得できるようにする。
④ デジタル社会において、情報通信を活用し、必要な情報を十分に取得、利用して円滑に意思疎通を図ることができるようにする。
という主旨が並びます。さらに、施策を実施する国・地方自治体の責務(第4条)、事業者の責務(第5条)、国民の責務(第6条)を示し、関係者相互の連携及び協力(第7条)、障害者の意見の尊重(第8条)をするように努めることを定めています。
 また、障害者基本計画等との関係にも触れ、防災や緊急通報、障害者への情報提供、支援者の確保・資質の向上。国民の関心、理解の増進にも言及しています。
 本法は罰則のない理念法ですが、情報にアクセスする権利を保障する取組みを明文化したという点で、私たち情報障害者にとっては画期的なものであり、今後の希望を大いに抱かせるものでしょう。次の世界を見るために、私たちは、私たちの願いを伝え続けることを求められているのだと思います。
 最後に、米連邦最高裁判事を務めたルース・ベーダー・ギンズバーグさんが、かつて同じ米国で奴隷制度廃止と女性の権利のために活動したサラ・ムーア・グリムケの言葉を引いて述べた言葉を紹介しておきたいと思います。
「私は性別を理由にした特別扱いを求めていません。求めるのはただ一つ。
 私たちを踏みつけているその足を下して。」