「岡山と旭川のご縁」

岡山大学 耳鼻咽喉・頭頚部外科 教授 安藤 瑞生

 皆様はじめまして、2020年12月に岡山大学病院耳鼻科に赴任しました安藤と申します。森俊己会長からのご指名により、ひとことご挨拶させていただきます。
 私の出身地は北海道旭川市で、近年は関東や東北の病院に耳鼻科医として勤務していました。安藤家のルーツは東北にあるため西日本には親戚もおらず、岡山には全く初めてやってまいりました。しかし、岡山にはなんと「旭川」が流れているではありませんか。このときほど運命の不思議を感じたことはありません。願わくば旭川ナンバーの車が岡山を走っているのを見たいものですが…。
 岡山大学病院の耳鼻科は国内で最も早い時期に誕生した耳鼻科のひとつであり、115年前の明治40年に遡ります。以来、岡山大学病院は、難聴者(児)の医療・福祉・教育に積極的に取り組んできました。第4代耳鼻科教授の髙原滋夫先生は、国内初の「難聴学級」を内山下小学校に開設(昭和35年)し、中等度難聴児が普通学校で教育を受けられるように配慮しました。また、生まれつき難聴を持つ赤ちゃんの早期発見・早期療育を実現するための「新生児聴覚スクリーニング検査」は現在全国で行われていますが、これを最初にモデル事業として導入(平成13年)したのは岡山・神奈川・栃木・秋田の各県でした。軽度・中等度難聴児への補聴器助成制度を全国に先駆けて導入(平成22年)したのも岡山県で、その後、他都道府県へ拡大され、平成30年に全都道府県において助成制度が完成しています。
 現代の耳鼻科は専門領域が細分化しており、私自身の専門は舌がんや喉頭がん、咽頭がんといった頭頸部(とうけいぶ)がんの治療です。前任地ではがん診療チームを担当していたため、難聴の診療に関わることは少なかったのですが、岡山では耳鼻科全体の責任者として、難聴者(児)支援にしっかり取り組んでまいります。まずは今年度、岡山大学病院に「聴覚支援センター」を開設する準備を進めています。岡山において難聴者(児)の自立、共生の実現に向けて、岡山大学病院の先任教授たちの先進的な取り組みをさらに拡充できるよう、皆様方のご意見を頂戴しながら進めてまいります。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。