会報6月号巻頭言

元号は変わっても粛々と」
             岡山県要約筆記団体連絡会 会長 佐藤聡子

 5月1日 平成から新元号令和へと時代が変わり、一部には少なからず混乱もあったようですが、時間の経過とともに令和は私たちの社会生活に自然になじんできたように思われます。平成時代の30年間、私たちが携わっている要約筆記の世界も大きく変化してきました。
 障害者の福祉制度の見直し、改正の流れの中で要約筆記事業に関しても大きな変化が続きました。2005年の障害者自立支援法の成立に伴い要約筆記は地域生活支援事業のコミュニケーション支援事業に組み込まれ要約筆記者の派遣事業が市町村の必須事業となったことは、いつでもどこでも要約筆記が利用できる環境が整ったことを意味するものでした。障害者が情報を入手するという権利は保障されて当然という考え方の基、支援者である要約筆記者は派遣事業の担い手としての責務が課せられることとなったのです。この責務に対峙できる専門性が備わっているかどうかを見極める方法の一番大きなハードルは要約筆記者の養成講習後に待ち受けている全国統一要約筆記者認定試験だと思われます。聴覚障害者が自らの権利を守り、聞こえないことで不利益を被らないためには、その場の情報が保障されることが不可欠です。その場の音声情報を文字情報にして伝えるという、まさに聴覚障害者の聞くという権利を文字というツールで擁護している人が要約筆記者なのです。要約筆記を行う人が、この場においては、情報を入手するという権利を擁護する担い手であるというところまで整理されてきたのが平成という時代の流れの中でのことでした。
 今、社会は超高齢化へとまっしぐら。そして人手不足も相まってAI技術も大変な勢いで開発、進化しています。AI技能を駆使し、これによって人の支援を行うという時代の到来はすぐそこまでという感じです。しかし、利用者の隣に存在し息遣いを感じながらの対人援助は人の手でしかできないと思います。まさに要約筆記者が行う意思疎通支援の現場は要約筆記者の専門性を存分に発揮する場だと思っています。
 今、岡山県には170名程の要約筆記者が登録されています。障害者総合支援法のもと聴覚障害者の為の意思疎通支援者として存在していることを一人ひとりが意識しながら自己研鑽を積み要約筆記者の派遣事業をより利用しやすい充実したものにしていこうと令和の時代に向けて思いを深めています。